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2014年4月19日土曜日

Balthus ~ バルテュス展行ってまいりました。



初めて観る絵がいくつもありました。
小品や習作が主ですが、興味深いものばかりです。

気になっていたライティングですが、可もないし不可もなし。
ただそれぞれの絵に適切な光が当たっていたかというと、疑問ですが。
それほどの設備もないのでしょう。

自分の作品にどのような光を当てるかにかけて、バルテュスは誰よりもこだわる画家ですから、そこは大切です。

さて、今回は彼のお気に入りの持ち物やら、アトリエの実物台模型とか、奥様と一緒に和服を着た姿から、家族の写真(晴美さんも含めた)などにも、かなりのスペースをさいていました。
アントナン・アルトーはしばしば彼を大絶賛し、バルテュスは彼の演劇の舞台装飾も手がけました。
勿論、アンドレ・ブルトンさんもたびたびコンタクトしています。(私のブログ最多出演の)
おっと、リルケを忘れてはなりませんね。幼い頃のバルテュスの才能を認めたひとです。
シュル・レアリスムのお仲間には入りませんでしたが、そこのジャコメッティと友達になりました。
そのへんのことが写真の助けもあり雰囲気的に感知できるところはあるにはありましたが。

ともかくバルティスのことは何でもかんでも見せちゃうぞ、という意気込みはよく伝わるものです。
なにより主要作品の多くが取り揃えられていていることには感心しました。そこは感謝したいくらいです。

でも、あまり周辺的な物まで見せられても、わたしのようなファンでも別にさほど興味はひかれませんね。特別研究でもしている人なら役立つのでしょうか?分かりませんが、メガネも置かれていました。


今回の絵は、ほぼ年代順に並んでいたように見えますが、表面テクスチャーを見ていくと、例の「樹のある大きな風景」あたりからは表面の厚さや、凹凸の激しさが増してきます。
「横顔のコレット」から(もっと前からもはじまっていますが)は、目立って透明色の塗重ねが厚くなっています。

今回もコレットの横顔は、本当に宝石のようでした。
うっとりするほど美しい横顔です。
その横顔の原型は、やはりピエロ・デラ・フランチェスカからかな、と思います。
模写が何枚もありましたが、確な影響を感じられます。
特に、バルテュスは微妙なハーフトーンの階調で造作を描きますね。
淡く輝く横顔と言ったほうがよいかと思いました。
全体的な色のつくり方、乗せ方、その扱いが、ピエロ・デラ・フランチェスカの研究から獲得されていることがわかるものです。
油絵なのにフレスコ調に感じられるものもあります。

色についてもっと言えば、「牧舎」の色のなんという穏やかで、こころ和むハーモニーか。
わたしが特に好きな「樹のある大きな風景」の色調はなかでも圧巻です。
やはりこの絵の前にいる時間が一番長かったです。
バルテュスの風景は特別ですね。
その季節のすべてがその色で十全に語られています。

人物については、先ほどの「横顔のコレット」は勿論、「鏡の中のアリス」、「キャシーの化粧」、あまりに有名な「夢見るテレーズ」に「美しい日々」さらに「読書するカティア」はバルテュスにしか描けないアルトーを驚愕させた少女たちですし、「白い部屋着の少女」、「部屋」、「猫と裸婦」、「朱色の机と日本の女」などしっかり揃っています。そのうち、「部屋」と「猫と裸婦」は思いの他存在感があり、光の描写、ハイライトが美しいものでした。いまでも像が目に残っています(笑 
そう、「決して来ない時」の後ろ姿の少女モチーフも魅力的です。まさにフリードリヒの血脈を継いでいます。全体の基本構図は「猫と裸婦」ですね。
同一モチーフをかなり反復して描いています。素描や下絵もかなりあるようでした。

後期の作品の、例の歌舞伎の「見得」をしているかのような「トランプ遊びをする人々」が異彩を放ってましたね。何とも言えない神秘的で畏怖を覚える顔です。古典的なものにやはり彼は惹きつけられるのでしょうね。

「ジャクリーヌ・マティスの肖像」、「12歳のマリア・ヴォルコンスカ王女」、「ピエール・マティスの肖像」などは初めて観ました。日本の少女の顔の素描がまた素敵でした。バルティスがまたどのように日本を見ていたかの一端を確認できた気がします。他に冗談にしか見えない、ロートレックが描きそうな「小人」は異色のバルティスでした。アイス食べてるのかな?

バルテュスの古典的な絵づくりの趣に、構図などに大胆な題材の扱いがつくづく感じられた展示会でした。



新たに好きになった絵に、「地中海の猫」があります。これはバルテュスの絵のなかでも構図や題材として異色なものにあたりますが、流れの中で見てゆくと、とても自然に見ることができました。
大好きな猫も主人公でご機嫌な大変楽しい絵です。
猫はモチーフによく出てきますが、彼の描く猫はどれも人のようであまり猫っぽくなく、顔が怖いです。
バルテュス家の猫がそういう顔なのか、彼の捉え方がそうなのか?
恐らく両者だと思います。彼も猫には例外的な敬意を払っていますし、そういう高邁そうな顔の猫を住まわせているのだと思われます。


後は、大傑作「街路」と「コメルス・サンタンドレ小路」、(ついでに「ギターのレッスン」、「猫と鏡」)があれば、文句なしでしたが、重要な作品がこれだけ見れれば、満腹です。
稀に見る品揃えでした。




参考記事:バルチュス ~Balthasar Michel Klossowski de Rola~


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